我国の風土、気候によって培われてきた伝統の構法。やさしく人を包み込む、木と土、紙で作られた住まい。軒の出の長さによって、夏の強い日射しを防ぎ、激しい雨からも建物全体をすっぽり覆って、しっかり保護、湿気から室内を守ります。冬には低い角度の日光をうまく室内深く取り込みます。襖、障子などの建具によって、家族の成長、世代交代など住み手の変化にもうまく対応しながら、住み続けられてきた本当の日本の住まい。こんな伝統の構法はどんなものだったのでしょうか。
近年、数多くの構法が、経済性を主体に商品化されて来ました。しかしながら、営々と受け継がれた伝統の構法の存在は大きいと思います。少し詳しく云いますと、日本の木、敢えて云えば、比較的近くで育った材を選んで建てるのが理想とされます。木の育った状態を見極め、充分に乾燥され、適材適所、木組を構成していく。こんな伝統構法は社寺建築を思い起こして頂ければ、よく解ります。
筋交などなく、まして金物に頼ることなく、貫と呼ばれる横架材と組むことで、柱と桁、梁などで、縦横に格子状で部材をきっちりと組み上げます。更に、小舞と呼ばれ、竹や杉で細かく編み上げ、これを下地として、土塗壁が塗り上げられます。貫による構成、伝統の木組の仕口、そして小舞による土塗壁、これらが、現在、木造軸組構法の主流として作られている在来構法との大きな違いです。いずれも柱と桁、梁で構成される軸組工法ですが、筋交等で固められた強固な構造になる在来スタイルとは異なります。在来工法では筋交等により、固く強固な性能を得ることになりますが、しなやかさは期待できません。一定の地震力には抵抗しますが、許容量を超えると破壊されることになります。一方、伝統構法では、大地震の際にも、木組がしなやかに対応し、地震力を吸収する効果を発揮し、土塗壁が限界に達するまでショックアブソーバーの役目を果たすことになります。これが云わば、完璧な柔構造となって、倒壊から人の命を守ることになります。
その上に忘れてはならない大きな効果として、木と土塗壁による調湿効果は、住む人をやさしく潤いをもって包み込みます。
今こんな伝統の住まいづくりが大いに注目され、現代に生かす方法を多くの建築家は考え始めています。勿論、この構法を現在の慌しいペースの中で、大変な手間暇を掛けて作り上げていくのは難しい事です。しかし、建物の寿命と安全性、快適性を考えてみると、この時間、そしてコストという大切な要素も充分に還元し得る選択であると思えます。
しかしながら、こんな形で日本の風土に根差した住まいが作られたとしても、現在の都市の夏はあまりに過酷なものになってしまっています。云わずと知れた、ヒートアイランド現象、温暖化は止まるところを知りません。
この贅沢で質の高い空間を、現代のハイテク技術の助けを借りて、もっともっと快適に作り上げる。自在に大空間にも、小さく間仕切ることも可能なこの住まいに、質の高い空気を万遍なく、均一に供給する。こんなシステムを、伝統の構法に組み込んでしまいます。空調と換気を同時に、そして熱のエネルギーを逃さない驚くほどのランニングコストの低さ、顕熱交換換気システム。伝統を素直に受け継ぎながら、新しい知恵を融合、このコンビネーションによって、まさに高齢者にも最適な住環境が作られています。