便利な市街地で快適な住まいを得ようとするには数々の難題が立ちはだかります。予算的に地価の高騰で狭小な土地しか手に入れられない、周辺が密集して日当たり、風通しが悪い、道が狭い・・・。特に住宅地と商業地あるいは工業地などの境界部には問題含みの宅地が本当に多いのです。中世から碁盤状の市街地が形成されていた京都の町屋は間口によって格とか租税が決められたこともありうなぎの寝床と言われるすまいが特徴でした。このタンザク状の難しい地形にもかかわらず京都の夏の蒸し暑さ、冬の底冷えにもうまく対応できる工夫がなされていたのです。
町屋は必ずしも狭小な住まいではありません。中庭、坪庭のつくり方、配置 によって涼風を招き入れ、昼間熱せられた中庭のカベが風を吸い上げる形となりうまくサーキュレーションを起させる。四季を通じて実に快適に過せる知恵が結集されていました。これが現代的にいうコートハウスの概念のひとつです。塀とか建物の外壁で敷地全体を囲ってしまって内側に複数の庭、パティオ、光庭を作って色んな角度から日光や風を建物に取り込みます。例え一ヶ処の光庭であってもこの方法なら周囲にいくら建物が密集、接近していても内部で環境をつくり微気候をつくることが出来ます。
コートハウスは京の町屋だけでなく世界中に、そして大昔からある手法です 。特にお隣の中国には沢山あります。この国のように広大な土地のある国ですら人間の住む地域は経済、安全・・・多くの理由で密集してしまうものです。 外は高い塀で囲まれていて中に入ると緑豊かな明るい空間があり居室へ光と風を供給する屋外の居間といえる中庭があります。しかし最近の再開発は住宅の高層化で胡同(フートン)のような潤いの多い豊かな街並みや住まいも壊されつつあります。

我国の狭小宅地でコートハウスを提案しても、「狭い所にわざわざ中庭を作るなどなんて無駄な」と思われるかも知れません。ところがこれが市街地の厳しい周辺環境を実に巧く克服してくれる手法なのです。コートハウスは上記のように多様な光を取り込み、風を引き込み、少しの緑でも目を和ませてくれ、自然の気配を楽しめる外の居間を作れます。
もうひとつの狭小な土地にうまく住まう方法は2階にダイニングとかリビングなどの居住空間を取り1階に寝室などプライベートな部屋を配します。何といっても上階の方が日照・採光・風通しには有利です。うまくいけば眺望も望めるかも知れません。私は敷地条件の厳しい住まいを考えるときにこんな2つの方法をよく提案します。
いづれの方法にも共通して心掛けることは出来るだけ間取りを開放的に作ります。それに加えて空間のロスを防ぐこともあって廊下で繋げたり小さく仕切るのではなく平面的にも立体的にも大空間にまとめます。 間仕切りは最小限に、家全体の気配がどこでも感じられるスキップフロアにしたり吹抜けなどを多様に活用します。狭い土地にもこんな形で縦横に大きな空間にまとめた住空間をつくることによってのびやかに豊かな広がりと開放感を得られます。
ここで気をつけねばならないのは空気の流れをコントロールする工夫が必要です。空間が大きくなるほど冷暖房の負荷は大きくなります。夏冬の温度環境の厳しい時に応じて空間を仕切る工夫も必要ですが、サーキュレーションをうまく考えておくことが大切です。夏は出来るだけ冷房の空気が家全体で平均的な温度分布のとれる全熱交換空調システムを採用するのは大変有効な解決法といえます。
これからもまだまだ都市への集中化は進んでいく一方だと思われます。敷地の細分化と周辺の条件の悪化は簡単には避けられない事だと感じます。こんな中で今回述べました 中庭、「コートハウスのプランニング」とか1、2階の逆転プラン「2F居住のすすめ」この2つに加えて「縦横に大空間」という3つの手法は、大変有効なものだと強調したいと思います。