省エネ住宅、エコ住宅…この10年程の間に色んな切り口で住まいの工法を売り出すキャッチフレーズが氾濫してきました。外断熱、壁体内通気工法、今やあたり前のようになった外断熱壁体内通気の工法も目まぐるしく変化し、高品質化しています。エネルギーのコストの削減、光熱費の掛からない住まい…。これは快適に住まうための大切な要素であることは間違いありません。
パッシブでもアクティブでもソーラーシステムはどれだけのメーカー、企業が鎬を削っているのだろう。すまいに纏わるハイテク技術の躍進には目を見張るものがあります。
数年前の事ですが、かなり極端な省エネ、ハイテク住宅を見る機会がありました。勿論、ありとあらゆるシステムを試みている実験住宅というものでした。屋根は一杯にソーラーシステムを備えています。開口は、ペアはおろかトリプルのガラスを重ね、エアタイト仕様。その上、熱線の進入を防ぐ特殊ガラスを採用しています。窓など開口部分は必要最小の寸法しかなく、かなり狭い。おまけに換気によるロスのないように必要最小限の空気の入れ換えしかしない。この機械換気に頼らなければ、汚染物質が室内に溜まりやすくなり、シックハウス症候群の大きな原因となります。また、家の中は昼間でも照明の助けなくしては、照度は保てません。壁体内通気、床下など蓄熱と断熱、外廻りは基礎に至るまで、徹底した断熱仕様が奢られ、まさに外の気候とは完全に隔絶された室内環境を形成しています。これこそ、まほうびん住宅!! 室内の温度、湿度は住み手の意のままにコントロールされます。人工的に完璧な快適性を確保、その上、エネルギーのコストパフォーマンスもうまく高水準に保っている。生活の快適性の中にコストコントロールというポイントは大きな要素ではあります。そして、ハードな面でのアメニティは満足されたと云えます。
近世より、住宅、住空間は物理的に均質としてのアメニティを数値的そして、概念的にもテクノロジーとして追求されてきました。「住むための機械」という定義で象徴された100年以上以前の方向性が現代迄綿々と追求され、作り続けられて来ています。
そして、今やアメニティ追求のためのあらゆるシステムが出揃いました。
都市化、自然環境の悪化に対応して、物理的な住空間づくりのためのこれらのテクノロジーの進歩向上は、大切な要素です。
しかしながらこれだけでは、住むための器、生活を包むための装置である住宅としては、あまりに大きな要素が欠落しています。
従来、人に安らぎを与える精神的、感覚的な分野、私達建築家はこの部分を最も重視し、大切に考えます。肌に感じる風、日光、木々の緑、そんな自然を身近に直接触れ合いながらの生活。これは理屈なしに人間にとって不可欠なもの、本質的なものです。やはり、音、光、熱、空気を人為的、物理的にコントロールされた住環境による快適性だけでは、人は安らげません。原点に戻って、素朴に自然と密着した暮らしを享受できる工夫を住まいの本質として、取り入れなくてはなりません。
自然…例え切り取られた小さな自然、断片的なものであってもこれらとの触れ合いがあってこそ、人は安らげ、そして明日への活力を培える本当の住まいになり得るのです。