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快適な空気まわりの空間設計「棲む」を楽しむ
快適な空気まわりと空間設計 第2回 安らぎをもたらす空気とは
第5回
「住まい」が趣味!
快適な空気まわりと空間設計 第2回 安らぎをもたらす空気とは
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「文明」と「文化」の違い

昔読んだ本で著者も書名も忘れてしまいましたが、話の内容だけ今もはっきりと覚えていることがあります。「文明」と「文化」について書かれていて、その違いを端的な言葉で定義していました。

“「文明」とは誰もがたやすくは成し得ないことを、誰もがたやすく成し得るように働く力であり、「文化」とは誰もが簡単に成し得ることを、誰もが簡単には成し得ないように働く力である”と。

例をあげて言えばこうです。昔は一日に何百キロも移動するなんてことは、特別訓練した人間でも不可能でした。ところが自動車という乗り物は、誰もが簡単に数百キロ移動することを可能にしました。自動車という物を生み出す方向に働く力を「文明」というと。逆にお茶に湯を注いで飲むという行為は子供でもできる事ですが、茶の湯となるとそうはゆきません。喫茶という誰もが簡単にできることを、誰もが簡単には出来ない茶道という体系に作り上げて行く方向に働く力を「文化」というと。

 

「文明」に偏る住まい

「文明」か「文化」か、どちらが優れているかという二者択一の話ではありません。どちらも大切です。ただ、住まいについて我われはあまりにも「文明」にばかり感心を持ち過ぎていないか?と自省しているところです。不動産広告は利便性や性能を声高に謳い、その物件がいかに「文明」的で有るかを競い合っているように見えます。悪いことではないでしょう。しかし私が物足りなく思うのは、その力の入れように見合う「文化」的なもののアピールが見られない事です。多分、それは訴えかけたとしても単なるラベルのようなものとなってしまうのでしょう。(不動産広告で全くでたらめな茶道具の配置のまま〈茶の湯が楽しめます〉というような写真を見せられるのは本当にガッカリします。)「文化」とは広告宣伝できない物なのかもしれません。

 

〈楽しみ〉は「文化」のなかに

「文明」の恩恵を追い求めて行けば、生活は利便性を増して快適になって行くのは確かです。ところが楽しみについてはどうでしょう。増してゆくでしょうか? 茶の湯とまでは行かなくても、“炭火で焼く干物で一杯”の楽しみについては下戸でも理解できます。ところが、それはなかなか手間のかかることです。そもそも〈炭〉という燃料が、ガスや電気のような工業製品ではなくて、大変に人の手間のかかった物です。それをいこして煙にいぶされながら調理するのは利便性の対極にある物ですが、何をすき好んでか人はその楽しみを捨てられません。暮らしの中にある楽しみは往々にしてこのように手間隙かかるものに有る、いや手間がかかるから〈楽しみ〉なのではないでしょうか。

友人達を自宅に招いてパーティーするよりも、居酒屋で宴会するほうが手間要らずです。季節ごとの行事に合わせて飾り付けを準備するより、高価な置物を飾りっぱなしにしておくほうが手間要らずです。毎年暮れの大掃除に障子紙を張り替え無くても良い、破れない障子は手間要らずです。しかし、こうした物には一種の楽しさ、便利さはあっても〈楽しみ〉は有りません。〈楽しみ〉とはより深い満足感を伴った楽しさです。先の「文明」と「文化」の定義に従えば、〈楽しみ〉は「文化」のなかにあると言えるでしょう。

 

「住まい」が趣味!

最近読んだ本で気に入ったのがこのフレーズです。この回のサブタイトルに拝借しました。書名は「ドイツ快適住宅物語」中公文庫、著者はグレーフェ搦q。ドイツの住まいについて書かれたものですが、そのなかにドイツ人がどれほど住まいに手間隙を掛けているかということが書かれています。

そして、その手間隙掛けることを楽しんでいるかということを。また、「整頓は人生の半分」というドイツの諺も紹介されています。整理整頓すれば、人生半分は片付いたことで、その後半分は楽しめるという意味合いがあるそうです。整理整頓に対するドイツ人の意識が表れています

「棲むを楽しむ」ということは、明らかに楽しそうなことをすると言うのではなく、つまりは、整理整頓や住宅の手入れなど、一般的には面倒で手間隙かかる苦役に対して、どれだけそのことを楽しんで出来るかということになるのでしょう。また、なれる事だというのをこの本を読んで思いました。

住まいに居付いて日々起きてくる瑣末事に喜びをもって向き合う、「住まい」が趣味の暮らしが、「棲むを楽しむ」ということです。

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著者プロフィール
  山野松雄  
  1949年  大阪市生まれ
  1973年 神戸大学工学部建築学科卒業
  1973年〜75年 長谷工コーポレーション設計部
  1975年〜76年 安藤忠雄建築研究所
  1976年〜84年 小林恒建築研究所
  1986年 山野建築計画研究所設立 現在に至る
  2001年〜 大手前大学非常勤講師
◎作品リスト
再生の家
敷地の中央に建つ築32年の鉄筋コンクリート住宅。子息の独立に際し、その一部を解体し内外装を一新して住まいを譲られました。敷地の空いたスペースに新たに同じ和風の外観をもつ現代的な暮らしやすい老後の住まいを準備されました。
竣   工 :2003年
構造・規模 :RC造2階
外断熱の家
大阪湾を見下ろす高台に建っている鉄筋コンクリート住宅。六甲おろしの冬の寒さや真夏の暑さから住まいを守る、基本性能に優れたエネルギー効率の良い住まいです。屋上では家庭菜園も出来ます。
竣   工 :2002年
構造・規模 :RC造2階+地下1階
店舗付住宅
和食器の店舗。蕎麦猪口を飾る格子窓が控えめなサインとなって,客を誘い込んでいます。中庭に開いて外部を閉じた立面は、2〜3階の住宅部分のプライバシーを守ると同時に,店舗の上品な外観を作っています。
竣   工 :2001年
構造・規模 :鉄骨造3階
屋上緑化の家
住宅密集地の狭小宅地に建つ鉄骨三階建て住宅。駐車場を確保して建ぺい率いっぱいの建物を作ると、緑を育てるスペースが殆ど残らない。玄関脇にシンボルツリーとして山ぼうしを植え、屋上には天然芝を敷き詰めています。
竣   工 :2000年
構造・規模 :鉄骨造3階
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