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こんな暮らしに、こんな空気 第16回 発育、発達による変化 アレルギーを中心に変化するものを中心に

赤ちゃんから1歳児までの身体の発育、発達について劇的な分娩から出生して発育期にはいる。体重は、3か月で2倍、1年で3倍になる。神経学的には、4か月で頚定(首がしっかり頭を支えられることだが、判定は難しい),7か月でお座り、10か月でつかまり立ち、伝え歩き、1歳2〜3か月で歩行が標準だ。発達は、頚定から歩行と、上体から下肢にチェックをしていく項目がある。人が、人たる所以は、歩行でき手を自由に使うことのようだが、赤ちゃんがそのことを認識して行動しているわけでなく、実際には目線の変化が発達を促しているのではないかと思う。歩行可能になるまでの変化で、目線は高くなっていく。寝ているより、座位は、視界が広がり気分はいいと思う。寝ていた赤ちゃんが、座位のようにバランスとりながら座位を保つのは、苦痛の面があると思うが、喜んで、赤ちゃんがお座りするのは、座位の目線が高くなることが関係しているのではないかと思う。換気との関係では、畳の部屋で、横になっている赤ちゃんは、大人が、座位や立位でいるより、低い位置におり、部屋の温度は、座位の大人より、やや低い温度に曝されるのだと思う。埃の吸入は、座位の大人より多く吸い込むと思う。
 最近は、太りすぎが問題になる時代だから、必ずしも 必要とは限らないが、痩せの赤ちゃんもいる。大半は、家族性、両親が痩せている、ことが多いが、食物の摂取量が少ないか、よく動くかだ。その際、たくさん食べさせる秘策はあるわけではないが,一つは、周りの皆が、美味しい美味しいといって、沢山食べることは、合理的な対応だ。家で食べない児が、ファミリーレストランで、見違えるように食べることがあるのは、多くの人が、喜んで食べている雰囲気が関係していると思う。もっと言うなら、取り合いをして食べる食事は、食べない子にはいい環境だと思う。縁者、親戚、友人が集まり、会食する機会は大切にすべきだ。

 

赤ちゃん、小児の免疫について

6か月くらいまでは、お母さんからの移行している免疫のため、外出もそれほどなく、そんなには病気にかからない。それでも、腸管の免疫に関しては、母体からの移行はなく、母乳による免疫が必要だ。馬など多くの動物では、母乳からの、免疫の移行がなければ、生存できない場合が多い。しかし、人間では、清潔が保たれ、食べるものも料理などにより熱が加えられ感染の危険は少なくなっている。しかし、難民キャンプでは、母乳の出なくなった母親のために、ミルクを援助されたら、乳児の死亡率が増えたこともある。経母乳感染の問題もあり制限する必要も一部にあるが、母児関係を良好に保つことも含め、同じ所で生活する母親からの抗体を受け取ることは、感染防止の上での意義は大きい。

免疫の関係した病気の中で、アレルギーの病気の位置 免疫の関係した病気には、感染症、腫瘍、血液疾患があり、感染症は克服されつつあるが、問題は次々起こってもいる。腫瘍、血液疾患は、生命予後に重大だし、膠原病でも致命的になるのは少ないが、重要な病気だ。しかし、より多数の人が罹患し、最近増加しつつある免疫関連の疾患は、アレルギー疾患だと思う。アレルギー疾患になり易さは、遺伝性がある。遺伝といっても、親の病気が必ず起こるのではなく、なり易さが遺伝すると考えた方がいい。

 

アレルギーマーチについて

アレルギー疾患は、アトピー、喘息、花粉症が代表的で、別々に起こること、成長、発育と共に変わっていくことも多い。少なくとも、ある年齢には、ある種のアレルギー疾患が多く、年齢により変化していくことが観察される。この事はアレルギーマーチと言われている。乳児期、アトピー性皮膚炎で、2歳くらいから喘息、大人は、花粉症と連続して、変化していく。ただ、すべての人がこのような順序をたどるわけではなく、アトピーが、一生続く人もいるし、始めから喘息で発症する人もいる。しかし、全体の比率としては、乳児期のアトピーは的に高く、大人は、花粉症が多いのは事実だ。アレルギー疾患を持った児の調査では、小児のアレルギーの初発症状は、アトピーだと言う人が、7割あり、喘息は2割強、花粉症発症は1割以下だ。また、年齢での変化をみると、1〜2歳では、アトピーは、他のアレルギー疾患の合併を含めると、8割が、アトピーをもっており、5〜6歳になると、3割強で、喘息は、1〜2歳では、3割強だが、5〜6歳では、9割弱になるという。花粉症は目、鼻の病気だが、その季節に顔、腕など露出部が赤くなり皮膚炎をきたすことがある。子供が、アレルギー疾患になるのは、体質、遺伝以外にも環境にも、影響される。乳児期に、花粉に暴露される程度によって、アレルギー関連の病気の発生に差があるとの報告もある。生まれた季節で、アレルギー疾患の発症の確率が違うとの報告もある。生まれたときの、臍帯血のアレルギーに関係する、免疫グロブリンの一種、IgEの濃度は、アレルギー疾患を発症する赤ちゃんの方が高値との報告は広く認められている。それは、遺伝性のものなのか、環境の影響で、母親が何らかの抗原に刺激されアレルギー反応をおこし、IgEが高値なのかは議論のあるところだ。漢方では、身体の成り立ちを、肝、心、脾、肺、腎の五臓によって説明するが、肺の支配は、肺、鼻、皮膚とのこと。西洋医学が、アレルギー疾患が、喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎と其々関連があるといっているのと同じではないかと思う。
 どうしてアレルギー疾患が、成長、発育で変化するかは、きちんと証明されているわけではないが、なんとか解釈を述べるなら、赤ちゃんの時、皮膚は無菌の胎内にあり、出生後、環境の影響を受け易く、横になった生活で、アトピーの原因は食事だけではないが、食べることの重要性は高く、食事の影響も受けやすい。環境、食事両者で、皮膚は病気になり易い。だから、皮膚の病気であるアトピーを起こしやすいとは、言えないだろうか。1歳を過ぎて歩き出し、2歳くらいになると走ることも出来るようになると体を動かすためのエネルギーを作ることに関連した呼吸の重要性は、相対的に高くなると思う。大人になると食べることも、運動することも生活の僅かな一部になってくる呼吸器の一部の花粉症になると言えばなんとか説明はできないだろうか。
 アレルギー反応は、感作があって、起こるもの(発症する前に、原因物質に接している)だが、初めて食べておこる場合がある。胎内か、母乳を通じて感作されているのである。アレルギーの反応は、食べてすぐおこる場合とおこるまで時間のかかる場合がある。反応機序はいくつかあるようである。アレルギーに関与する臓器は、さまざまで、食事アレルギーに関するものでは、口腔と腸管がある。アトピーでは皮膚、花粉症では鼻、眼、喘息では肺が反応臓器になる。アレルギーは、健全な 状態ではおこらないが、異常をきたすとおこる場合がある。腸管の関係したアレルギーは、何もない場合は、アレルギー反応をおこさないのに、下痢をおこすとそれまで、異常きたさなかった食品でアレルギー反応がおこるようになる場合がある。鯖などの青味魚の中には、新鮮な魚では、反応をおこさないが、古くなったものでは、同じ魚でも反応をおこすことがある。しかし、これは、アレルギー反応でなくて、魚に含まれているアミノ酸が、細菌でヒスタミンに変化して下痢や蕁麻疹をおこすとの説が有力だ。喘息では、感染による気管支炎がきっかけで発作がおこることも多い。また、最近よく経験するのは、明らかに、ぜーゼーやヒューヒューはいわないのに、風邪のあと咳が2週間以上続く児がみられる。熱もなく、咳は、布団に入った時や夜中、朝方など、一日の内、ある特定の時間のみに興るのが特徴だ。布団の埃、気温の変化、気圧の変化が気管支の刺激になっている可能性がある。そのような病態は、咳喘息やアトピー咳、アレルギー気管支炎と呼ばれる病気で、喘息に準じた治療が効果的な場合がある。それほど多いものではないが、ある食物を食べて、なにもしなければおこらないのに、運動するとおこることがある。食物依存性運動誘発性喘息といわれている病態だ。花粉症のある人では、ある種の果物でアレルギー反応をおこす場合がある。花粉の抗原と果物の抗原が交差反応するらしい。鼻と口腔は近いことも関係しているだろう。口腔アレルギー症候群といわれている病態だ。アレルギーではないが、アレルギーと似た皮膚炎をおこす、野菜や花がある。ヒスタミンやセロトニンなどを含んでいるため皮膚炎や蕁麻疹を起こすのである。アレルギーと食物中に含まれている成分による皮膚炎や異常との判別は難しい点がある。

 

アレルギー疾患の治療について

診断と治療は、アトピーでは、軽症なら外用治療だけで軽快し、中等症以上は、薬の服用も勧められる。すべて食餌が、関係しているわけでないが、難治性のものや悪化を繰り返す例では、食餌を含めた原因検索が必要となる。原因が判れば、原因除去が原則である。ただ、赤ちゃんの食事性アレルギーでは、2〜3歳で、摂取可能となる例もあり、主な食事アレルギーの原因物質である、大豆で8割、小麦や牛乳で6割前後、卵黄で5割、卵白で3割が摂取可能になるといわれている。第一子が食事アレルギーをもっている場合、妊娠中や、授乳中に母親が原因食物の除去を行うかは、定説はないのが現状だが、栄養や発育への影響が少なく、アナフィラキシーなど症状が重症の可能性がある、ピーナッツに関しては、除去が推奨されるが、卵、牛乳、大豆、米、小麦などについては、勧められないようだ。喘息では原因を明らかにするより、発作を抑える治療が中心で、重症度に応じた治療ガイドラインが大人、小児別に設けられている。抗アレルギー薬と気管支拡張薬、ステロイドや気管支拡張薬の吸入療法が主な治療法だが、吸入療法が中心になりつつある。花粉症では、発作が起こる前から予防的治療すると症状が軽くなるようである。今後、飲んで治す花粉症の治療(減感作療法)が採用され、新しい可能性が出てきたように思う。減感作療法は、以前、喘息の治療法の柱として行われていたが、治療に時間がかかること、発作を抑える治療が、発作の誘発になる場合があったため、行われなくなった経緯を考えると、興味深いことだ。
 アトピー、喘息、花粉症は適切な漢方治療は有用な場合があり、ガイドラインには入ってはいないが、今後検討される可能性はある。

 

最後に

こうして、アレルギーを見てきますと、アレルギーとは、何?といった疑問が沸いてきます。花粉症の人は、免疫グロブリンの一種であるIgAの産生に欠陥があるため、身体を守るためにIgEが産生される説もあるようだが、産生されるIgEでアレルギー反応がおこってしまう。免疫は自己と他とを区別もので、命や生命の基本で、そうした生命の基本に問題がある可能性がある訳で、重大な事だ。

OASとも言われる、口腔アレルギー症候群はまことに興味深い。花粉症の種類により、アレルギーを起こす食べる果物や野菜種類が、微妙に違うのだ。カバノキ科のシラカバ(ハンノキ、オオバヤシャブシも含む)による花粉症の人では、リンゴ、桃、キウイなどで、反応がおこり、キク科のブタクサによる花粉症の人では、メロン、スイカ、バナナなどでおこり、杉花粉症の人では、トマトでおこるらしい。(下記のOASにおける交差反応の表をご参照ください)

食物依存性運動誘発性喘息も考えようによっては、アレルギー疾患の歴史を表現しているともいえる。どういうことかというと、食物を食べて、それだけでは、アレルギー反応が起こらない点は異なるが、運動するとアレルギー反応がおこるということは、食物だけとは限らないが、乳児期のアトピーから、2歳くらいになり動くようになると喘息がおこってくる現象を、食物依存性運動誘発性喘息では、数時間でおこしているようなものとは言えないだろうか。食物依存性運動誘発性喘息では、食物を食べただけでは、異常が起こらないのは、乳児期のアトピーとは異なっているが。尚、食物依存性でなくても、運動で喘息がおこることはあり、運動誘発性喘息(exercise-induced asthma)といわれており、乾燥した空気を吸入することが刺激になり、喘息発作を起こすと考えられている。喘息に水泳がいい運動だと言われているのは、全身運動で呼吸筋を鍛える、肺活量を多くすること以外に湿度の高い所で運動するため、乾燥した空気の吸入より気道への刺激が少ないことも関係しているようである。

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著者写真
著者プロフィール
鈴木小児科クリニック院長
鈴木 正治
(すずき まさはる)
1976年 岡山大学医学部医学科卒業 
1976年 岡山大学麻酔科研修
1977年 三重大学小児科入局
1985年 山田赤十字病院小児科
1985年 山田赤十字病院小児科副部長
1991年 三重県伊勢市で開業
1990年9月 日本小児科学会認定医
2005年10月 小児科専門医

用語の説明

●IgE

アレルギーに関係した免疫グロブリンの一つ。トータルのIgE値は、アトピーで異常高値することが多く、個々のIgE値は、児が反応するアレルギー物質を示している。アトピー、喘息、花粉症、すべて反応はみられることがあるが、高値であっても、必ず現在起きている症状の原因とは断定出来ない。特に食事の原因を特定するのは、慎重であるべき。

●アトピー 

元々、奇妙な現象の語源よりきている。ここでは、アトピー性皮膚炎と同義で使っている。

●喘息

繰り返し呼吸困難をきたす発作性の病気で、ゼイゼイ、ヒューヒューといった独特の呼吸音がし、咳を伴うことが多い。病気の本体は、炎症とされ、ステロイド吸入剤の使用によりコントロールは大半の症例で可能になったが、稀に突然死の例もある。若年者では、10台後半から20台前半に突然死のピークがある。

●花粉症

鼻水、鼻詰り、眼の痒みが中心の病気。春の杉花粉による症状が強い場合が多い。鼻、眼以外にも、皮膚炎、咳を伴うことがあり、不眠、頭痛、いらいらなど日常生活に支障きたす症状の合併もみられる。

●五臓六腑

漢方で、心、肝、脾(ひ)、肺、腎の5つの内臓が五臓。西洋医学の臓器とは、必ずしも一致しない。六腑は大腸、小腸、胆、胃、三しょう、膀胱の管腔臓器のこと。合わせて、身体全体の意味で用いられる。

●咳喘息

咳の続く病気で、気道過敏性があり、気管支拡張剤が効果あり、ゼーゼー、ヒーヒーはいわないが、喘息の亜型と考えられている。

●アトピー咳

咳喘息と同じ、咳の続く病気だが、気管支拡張剤は効果ない。吸入ステロイド剤の使用が必要 食物依存性運動誘発アナフィラキシー 食物アレルギーの一種で、ある食物を食べて運動すると痒み、蕁麻疹、腹痛、下痢、嘔吐、ひどくなると呼吸困難、喘鳴などもおこる可能性のある病気で生命の危険を伴うこともある。小麦、蟹、海老、貝、果物(ブドウ、モモ)、蕎麦などが原因に成り得る。食後2〜3時間以内の運動で起こることが多く、10歳台の思春期の発生が多い。 

 

●減感作療法

原因となる抗原を少しずつ投与、摂取することで、アレルギー反応を抑えようとする治療法。花粉症では、抗原を注射する方法と、抗原を含んだパンを噛んで、症状起こらないようにしようとする現在研究中の治療法がある。以前、喘息患者に抗原を低濃度から除々に高濃度に注射する治療が行われていたが、発作誘発の危険があり、最近では行われなくなった。

●口腔アレルギー症候群

花粉症の患者が、十分な治療が為されてない状態で、りんご、桃、メロン、スイカ、キュウイ、バナナ、トマト、さくらんぼなどを食べると口腔内や周囲の発赤、痒み、腫脹などをきたし下痢や嘔吐、喘息発作を起こすこともある病気。シラカバやオオヤシャブシ(カバノキ科)の花粉と関連が指摘されている。

●IgA

免疫グロブリンの一種で、血中や分泌液、鼻汁、唾液、消化液、母乳などに存在し、血中のIgAの役割は不明な点もあるが、分泌液中のIgAは、感染予防の面で重要な役割をしている。アレルギー疾患の児では低値を示すのが知られている。

 

OAS(口腔アレルギー症候群)における交差反応

花粉との関連が知られている食物
花粉
果物・野菜類
カバノキ科(シラカバ)
(ハンノキ)
(オオバヤシャブシ)
バラ科 リンゴ、モモ、サクランボ 
洋ナシ、イチゴ、ウメ、ビワ
アーモンド
セリ科 セロリ、ニンジン
ナス科 ジャガイモ、トマト
マタタビ科 キウイ
クルミ科 クルミ
その他 ピーナッツ、ココナッツ
キク科 (ブタクサ) ウリ科
バショウ科
メロン、スイカ、キュウリ
バナナ
(ヨモギ) バラ科
セリ科
ウリ科
リンゴ
セロリ、ニンジン
メロン
イネ科(カモガヤ、オオアワガエリ等) ナス科
ウリ科
ミカン科
ジャガイモ、トマト
メロン、スイカ
オレンジ
スギ科(スギ) ナス科 トマト
※食物アレルギー 診断と治療社より
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