人とペットの体温調節の違い
今日では、犬や猫たちを一つ屋根の下で暮らす「家族の一員」として迎える人が増えています。彼らと共に暮らすことで心の潤いや安らぎが得られ、また疎外感や孤独感から開放され、さらに動物を世話することで生きがいや責任感が生まれます。つまり、共に暮らすことによって、人も動物もより健康で幸福な生活をおくれるということなのです。
犬や猫は「パンティング」によって、
体温の上昇を防ぐ
そこで大切になってくるのが、動物たちを理解するということです。理解することで互いに我慢しあうようなことを極力少なくすることができます。食事についてもそうですし、住環境や行動、かかりやすい病気や人と動物に共通の感染症など、言葉を話せない、そして、ヒトとは異なる動物種の家族だからこそ、知っておかなければならないことも多いでしょう。
今回はその第1回目として、体温調節について考えてみましょう。季節は盛夏、高温多湿な日本の夏は人にとっても過ごしにくいものですが、動物たちにとってはどうなのでしょうか。人は体温が上昇してくると発汗というシステムで体温を下げます。これは、体表に分泌された汗が蒸発するときに気化熱を奪うことで効率よく機能します。したがって、気温が少々高くても湿度さえ低ければ効率的ですし、風があればより汗は効率的に気化熱を奪うことができます。その対極にあるのがウサギの持つシステムです。ウサギはあの大きな耳によって熱放散することで体温の上昇を防いでいます。多くの熱を逃がしたいときには、より多くの血流が耳に流れるようになっています。しかし熱放散の場合、気温が体温以上になれば全く機能しないことはいうまでもありません。
それでは、犬や猫はどうなのでしょう。パンティングという言葉をご存知でしょうか。口を開け舌を出して、ハァハァやるあれですね。このパンティングというのが犬や猫の体温の上昇を防ぐシステムです。このシステムは呼気として熱を逃がす放散と、喉頭や口腔の粘膜、舌の表面から水分を蒸発させて気化熱を奪うという両面作戦になっています。しかし、全身の体表から気化熱を奪う人より効率も悪く、日本の夏は犬や猫にとって人以上に過ごしにくいと考えた方がよさそうです。
「パンティング」と空調設定、熱中症への対応
とりわけ、シーズーやペキニーズ、パグ、ブルドッグなどの短頭種と呼ばれる鼻の短い種類の犬は、喉頭の内腔も狭く、気化面積が大幅に少なくなるため、体温を下げるのが苦手です。そこに肥満という問題が加わると体温の上昇がさらに激しくなるため、ことは深刻です。人の体感温度だけで環境を考えた場合、最悪のケースでは熱中症もあり得るというのが現実です。必ず動物たちの様子を観察し、パンティングが始まってもすぐに収まる程度の温度に空調を設定してあげてください。
ちなみに、熱中症ではパンティングが激しくなり止まらず、大量のよだれを流し、目は充血し、口の粘膜は鮮紅色となって、ぐったりしたままとなります。この症状をそのまま放置すると、血色素尿がでる、下痢・嘔吐する、痙攣発作を起こすというような命にかかわる状況となり、血圧の低下、呼吸不全を呈して、短時間で死に至ることもあります。 応急処置としては、とにかく体を冷やすこと。水道水を腋や足の付け根にどんどんかけるのも効果的です。脳症を防ぐために頭を冷やすことも忘れないでください。症状が出て30分以内に適切な処置ができれば救命率はかなり上がります。
室内以外にも、止めた車の車内や、焼けたアスファルト道での散歩など、夏は危険がいっぱいです。くれぐれもご用心のほどを。